私だけの王子さま



その後のことは、よく覚えていない。


気が付いたら、委員長と2人、教室を飛び出していた。


途中、遅れてやって来た担任に、腕を掴まれ引き止められた。



「相原!
それに、沢村までっ!

お前ら一体どこに行くんだ!?」



「すみません!

急用なんですっ!!」



そう言い残し、一瞬弛んだ担任の手を引き離すと、HR中で静かな廊下に、2人分の足音だけが響く。


担任は、その勢いに圧倒されたのか、何も言えず、ただ呆然とその様子を見送っていた。







校門まで走ると、ちょうどタクシーが通り掛かった。


これに乗れば、電車で行くよりも大分早く着くはずだ。


委員長も同じことを思っていたようで、私たちは、迷わずそのタクシーに乗り込んだ。



「隣町の老人ホーム‘あおぞら苑’までお願いします!」





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