私だけの王子さま
学校から20分ほどの道のり。
信号で止まる度に、ハラハラして落ち着かない。
だって、早くしないと、本多さんが…
本多さんが…
いなくなってしまう―――!!
その時、隣に座っていた委員長が、ポツリと呟いた。
「花梨さん…何でこんなギリギリまで、教えてくれなかったんだろ」
そう。
委員長に電話をかけて来たのは、花梨さんだった。
花梨さんは、電話口で、震えながら言っていたそうだ。
‘黙っててごめん。
本多さん、今日遠くへ行ってしまうの――…’
花梨さんが、おかしかった理由は、それだったのだ。
そして、最後に会った時、本多さんが寂しそうだったのも、
花梨さんが、谷本さんに言った‘例の件’も全て―――。
考えてみれば、気付くための要素はたくさんあった。
委員長との関係のことで悩んでいたとか、
施設職員の事情を考えて…とか、
そんなの一切関係ない。
私が、もっと周りをよく見ていれば、きっとこんなことにならずに済んだ。
こんな別れ方、寂しすぎる…。
お願い。
間に合って―――!!