私だけの王子さま
「この写真、本多さんに頼まれたの。
二人との思い出が欲しいって。
隠し撮りみたいになっちゃったけど、この時、とてもいい雰囲気だったから…。
きっと、本当の孫のように思ってたのね…」
私は、花梨さんから写真を受け取り、じっと眺めていた。
ベッドにいる本多さん。
その両隣に座る私と委員長。
そこから伝わって来るのは、穏やかな空気のみ。
それぞれが抱えている傷は、何一つ感じられない幸せな時間が写し出されていた。
「それ見てたら、私、居ても立ってもいられなくなって…。
このまま秘密にしておくなんて出来なかった。
だから、雪也くんに…電話を…」
花梨さんは、顔を覆って俯いてしまった。
きっと、間に合わなかったことを責めているのだろう。
だけど、私も委員長も…
花梨さんを責めるつもりは全くなかった。
だって、花梨さんが言わなかったのは、本多さんの意思を尊重しただけ。
花梨さんなりに、苦しんだ結果、電話して来てくれただけなんだ。
私は、震えている花梨さんの肩にそっと手を置いて言った。
「花梨さん…
顔を上げて下さい」
その瞬間、花梨さんの瞳からは、たくさんの涙が溢れ出していた。
そして―――…。