私だけの王子さま
「相原さん、これ…」
しばらく経ってから、誰もいなくなった本多さんの部屋で思い出を噛みしめていた時、
花梨さんが、小さな紙袋を差し出した。
「本多さんが、相原さんに渡して欲しいって…。
あと、雪也くんには、これを」
そう言って、委員長には、白い封筒を手渡した。
花梨さんの目はまだ赤かったけれど、ついさっきまでのように悲痛な表情は消えていた。
「本多さん、何日も前から、用意していたのよ。
自分がいなくなった時に、見てもらいたいって言ってた」
私は、傍にある整えられたベッドを見た。
当然のことながら、そこにはもう誰もいない。
でも、目を瞑れば、すぐに浮かんでくる本多さんの姿。
花梨さんから渡された紙袋には、きっと、ここでの本多さんの思いがたくさん詰まっているはずだ。
私は、持っていた鞄の中に、そっと紙袋をしまいこんだ。