私だけの王子さま
その日、家に帰ったのは、夕食の時間を過ぎてからだった。
頭では分かっていても、ずっとあの部屋にいれば、本多さんが帰ってくるような気がして、なかなか出られなかったのだ。
リビングに行くと、母親が担任から何度も電話があったことを教えてくれた。
理由を問われたけれど、適当に誤魔化して、ろくに夕食も摂らずに、私は自分の部屋へと向かった。
パタンッ――…
ドアを閉めると、月の明かりだけが室内を照らす。
何となく、このままでもいいような気がして、私はベッドに腰を下ろした。
しばらくしてから、隣に置いてある鞄に手をかける。
中にあるのは、本多さんからの最後の贈り物。
ついに、それを見る時が来たのだ。
私は、紙袋を取り出した後、大きく息を吐いた。
そして、中を見ると…
そこには、一通の手紙と、手のひらサイズの箱が入っている。
この時の私は、本多さんからのその贈り物が、私を突き動かすきっかけになるとは、全く思っていなかった――…。