私だけの王子さま
帰りの教室は、いつもにも増して賑やかだ。
みんなそれぞれ、プールや旅行の話で盛り上がっている。
「さーて、帰るか」
そんな中、私が小さく呟いて、教室を出ようとした時だった。
「柚季っ!!」
声を掛けてきたのは、幼なじみで親友の麻智<マチ>だった。
「柚季、もう帰るの?
この後、七菜<ナナ>や千恵美<チエミ>たちとカラオケ行こうって話してんだけど……」
そう言って、窓際で話している七菜たちの方に目を向ける。
七菜も千恵美も、普段から仲良くしている友達だ。
「あー……、行きたいけど、今日はちょっと……」
私は両手を合わせて、謝るポーズを作った。
「…そっかぁ、残念。
あ、もしかしてデート?」
麻智はニヤニヤしながら、私の顔を見た。