私だけの王子さま
そして、しばらく海を眺め、規則正しい波の音で心を落ち着かせた後。
ついに私は、覚悟を決めた。
「ねぇ、委員長。
舞さんと学さんの話、覚えてる?」
「え…?
あ…うん。もちろん覚えてるけど」
唐突過ぎる私の話に、委員長の動きが一瞬だけ止まる。
だけど、この話こそ、私が今日‘海に行きたい’と言った理由なのだ。
「あのね…二人が亡くなった海って…
ここなんだって」
「……」
真っ直ぐ前を見つめる私の横で、委員長が息をのむのが分かった。
今、私たちが眺めている雄大な海。
沢山の人たちが楽しそうに笑うこの海で、
二年前、事故が起こったのだ。
本多さんの大切な孫だった舞さんと、その恋人の学さん。
そして、幼い頃から舞さんが抱いていた純粋な夢。
もう少しで掴めそうだったその夢は、
この場所で儚く散った。