私だけの王子さま
今、この海岸にいるのは、
私たち二人だけ。
少し離れた所ではしゃぐ人たちは、誰一人気が付いていない…
二回目の抱擁――…。
そんな私たち二人の横を、何台目かの車が通り過ぎた時、
委員長が口を開いた。
「俺さ…ちゃんと話したんだ。
両親に、今までの気持ち」
「え…?」
委員長の言葉に反応して、私はその胸から、顔を離そうとした。
でも…
委員長は腕の力を弱めることなく言った。
「ごめん…
そのまま聞いて…?」
「…う…ん…」
委員長の胸が、
私と同じくらい、ドキドキしている。
だけど、次第に二人の鼓動が重なり合い、
この場が落ち着いた空間へと変わる。
「俺…本多さんがいなくなった時、
ばあちゃんが死んだ時と同じくらい、ショックでさ。
正直…どうすれば良いのか分からなかった」
「…うん」
「でも、この前貰った手紙にさ、書いてあったんだ。
柚季ちゃんをよろしくって。
傍で自分を支えてくれる人を大切にしてあげてって」