私だけの王子さま
声のした方を振り返ってみると、3メートル程離れた所に一人の男の子が立っていた。
どこかで、見たことのある顔。
「……委員……長?」
私が驚いた顔をして言うと、その人はハハッと軽く笑った。
「委員長って……。
相原も俺のこと、そう呼んでたんだ?」
「えっ!いや……その……」
別に悪いことをした訳でもないのに、理由もなく焦ってしまった。
彼――沢村雪夜<サワムラユキヤ>は、私のクラスメイトだ。
すごく真面目な性格で、学年トップの成績の持ち主……だったと思う。
身長はそんなに高くはないし、顔だって……悪くはないけど良くもない。
正直言って、人を外見で判断していた私にとっては、どうでも良い存在だった。
でも、同じく成績の良い麻智と共にクラス委員を務めていて、そのつながりで何回か口は聞いたことがあった。
委員長という呼び名はそこから来ている。
副委員長である麻智がよく「委員長」と読んでいるから、私の口からも自然と出てきてしまったのだ。
「あはは。そんなに焦んなくてもいいのに。
……ところで、こんな時間に何やってんの?」
委員長は、ゆっくりと私に近付きながら言った。
「……別に。何でもないよ」
今日何があったのかなんて、情けなくて、とてもじゃないけど言えない。
私は、慌てて話をそらした。
「そっちは?もしかして彼女とデートだったとか?」