私だけの王子さま



麻智の部屋は、いつ来ても整理整頓されている。


机の棚にはびっしりと並んだ参考書。
隣には、白い洋服ダンス。
その上にいくつかぬいぐるみがあって、シンプルな印象の中に可愛らしい雰囲気を醸し出している。


全開になった窓で、白いレースのカーテンが、風を受けてパタパタと揺れていた。



「麦茶だけどいい?」

部屋で待っていると、麻智がお茶とお菓子をのせたお盆を持って来てくれた。


「うん。ありがとう。
ごめんね、気ぃ遣ってもらっちゃって」


そう言う私を見て、麻智の瞳が大きく開く。


「……え?
私、何か変なこと言った?」


昨日あんなことがあったからなのか、人の表情や仕草に敏感になっているらしい。


外見だけを見てきた今までは、人の気持ちなど考えもせずに知らない間に誰かを傷つけていたと思う。

でも、それが間違いだったって気付いたから。
だから今、麻智の表情を見て何か余計なことを言ってしまったのかも……と不安になったのだ。





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