私だけの王子さま
謎多き人
もうそろそろ夕方になるというのに、辺りはまだ明るい。
窓の外からは、朝から休みなく響いている蝉の声と、無邪気に遊ぶ子どもたちの声が聞こえている。
そんな中、テーブルを挟んで向かい合う私たち。
「――そっか……」
全てを話した後、麻智は小さくそう呟いた。
「うん……。今まで黙っててごめんね」
俯きながら言うと、目を瞑りゆっくりと首を振る。
「ううん。色々あって辛いのに、話してくれてありがとう。それと私の方こそごめんね」
「え?」
「私、気付いてたのに。柚季が変わっていくの、分かってたのに……。こんなことなら、柚季が傷付く前にもっと早く話聞いてあげれば良かった……」
麻智は……、泣いていた。
私なんかのために、肩を震わせながら、涙を流してくれた。
その時、思った。
こんなに心の優しい友だち、他にはいないって。
「ありがとう、麻智」
心からの感謝を込めて、泣いている麻智をそっと、抱きしめた。