私だけの王子さま
肩まである髪の毛を指にくるくる巻くのは麻智の子どもの頃からの癖。
考え事をしている時によく見る仕草だった。
「おーい、麻智ー?」
わざとらしく口の横に手を添えて、響かせるような声で呼ぶと、ハッと麻智が反応した。
そして、驚きの言葉を発する。
「あのね……実は委員長、前々から柚季のこと心配してたみたいなんだよね」
「へっ!?」
前々から、心配してた――?
「どういうこと?」
顔をしかめながらも、思わず身を乗り出す。
「いや、私にも良く分からないんだけど。
ほら、私クラス委員の仕事でよく委員長と一緒にいるじゃない?」
「うん」
確かにうちの高校は、何でもクラス委員に頼る傾向があるから、委員長と麻智はこれでもかってくらいに一緒に何かをやっている。
クラス委員兼雑用係と言っても過言ではない損得両方ある役目。
「いつだったか忘れちゃったけど、委員長に柚季のこと聞かれたことがあるんだ」
少し目線を上に向けて、その時のことを思い出している様子の麻智。
でも、その少しの間がもどかしくて。
なぜか分からないけれど、早く聞きたいって思っている自分がいた。