私だけの王子さま
沈黙は、時間にしたら数秒。
すごく短いはずなのに、すごく長いように思えた。
だから、麻智が再び口を開いた時は、ドキンと大きく心臓が動くのを感じた。
「えっと、確か麻智は相原と仲良いの?って聞かれて‘親友だよ’って答えたら……」
「答えたら?」
「……あいつ、大丈夫かなって」
「え?」
「昔の俺と、似たような瞳をしてるって」
「昔の……委員長と?」
期待を込めて聞いたその言葉は、私には全く理解できない。
「……それで?」
さらに追求しようとすると、麻智は首を傾げる。
「それ……だけ、かな?」
「はい?」
‘それだけ’って……。
期待していた分、一気に力が抜ける。
麻智の話によれば、委員長が私のことを口にしたのは、その一回だけらしい。
ただ、その後も、私を不安そうに見ていることが何度もあったそうだ。
麻智は、昨日のこともあるし、もしかして好きなんじゃない?って、お得意の妄想をしてたけれど、それはないと思う。
昨日、確かに委員長は優しかった。
温かい手で何度も、私の頭を撫でてくれた。
でも、それは、‘好き’よりも‘同情’に近かったような気がする。
‘昔の俺に似てる’
その言葉が、何となく私の中で引っ掛かっていた。