私だけの王子さま


沈黙は、時間にしたら数秒。
すごく短いはずなのに、すごく長いように思えた。


だから、麻智が再び口を開いた時は、ドキンと大きく心臓が動くのを感じた。


「えっと、確か麻智は相原と仲良いの?って聞かれて‘親友だよ’って答えたら……」

「答えたら?」

「……あいつ、大丈夫かなって」

「え?」

「昔の俺と、似たような瞳をしてるって」

「昔の……委員長と?」


期待を込めて聞いたその言葉は、私には全く理解できない。


「……それで?」


さらに追求しようとすると、麻智は首を傾げる。


「それ……だけ、かな?」

「はい?」


‘それだけ’って……。
期待していた分、一気に力が抜ける。


麻智の話によれば、委員長が私のことを口にしたのは、その一回だけらしい。
ただ、その後も、私を不安そうに見ていることが何度もあったそうだ。


麻智は、昨日のこともあるし、もしかして好きなんじゃない?って、お得意の妄想をしてたけれど、それはないと思う。

昨日、確かに委員長は優しかった。
温かい手で何度も、私の頭を撫でてくれた。


でも、それは、‘好き’よりも‘同情’に近かったような気がする。


‘昔の俺に似てる’

その言葉が、何となく私の中で引っ掛かっていた。










< 43 / 220 >

この作品をシェア

pagetop