私だけの王子さま
「……季っ!
柚季っっ!」
耳元で麻智の大きな声が聞こえ、ハッとした。
自分の世界にいた私の顔を心配そうに覗き込んでいる。
「ごめん、私ボーッとしてたね」
「本当だよ!声かけても全然戻って来ないし。ところで、委員長の家が何かあんの?」
「あー……」
一瞬言おうか迷ったけど、隠しごとはしないという約束をしたばかりの私たち。
意を決して、正直に言うことにした。
すると麻智は、
「……うーん。謎だね」
と呟く。
一緒にいることが多い麻智でさえも知らない委員長の行動。
さっき聞いた心配の意味。
そして‘昔の俺’とはどういうことなのか。
そもそも何であの公園にいたのか……。
委員長は、‘バイトみたいなもん’って言っていたけれど、それがまた気になる。
謎は……、深まるばかりだった。