私だけの王子さま
麻智は、歩きながらも、これから観に行くバンドのことをペラペラと早口で喋っている。
でも、私の耳には入ってこない。
例え入ってきたとしても、すぐに出ていってしまう。
それは、やっぱり、委員長のことが原因だった。
――昨日の夜。
いつまでも鳴らない電話に痺れを切らし、もう一度私からかけてみようかとも思って携帯に手を伸ばした。
でも、しつこいと思われたら……。
そんな考えが頭を過って、ボタンを押すことができなかった。
もしかして、委員長の身に何かあったのかな。
それとも、
もう私とは連絡を取りたくなくないのかな……。
こういう風に、悪い方に考えてしまうのは私の良くない癖だと思う。
連絡できないのは、単に忙しいだけなのかもしれない。
だったら、いつでも連絡してと言った委員長を信じればいい。
信じて、待っていればいいのに……。
でも、やはりどこかで完全には信じきれない自分がいる。
それが、たまらなく嫌だった。