私だけの王子さま
ダッッ――――!!
気が付いた時には、ライブそっちのけで走り出していた。
「えっ!ちょ……柚季!?」
呼び止める麻智の声にも振り向くことなく、
ただ、あの二人の姿を追うのに必死だった。
見かけた時には、10メートルほどの距離だったのに、呆然としていたほんの少しの間に、距離は倍に広がっていた。
他の通行人が邪魔で、うまく走れない。
しかも、こんな時に限って、ロングスカートに足元はサンダル。
走っているはずなのに、間は開く一方だった。
このままでは、見失ってしまう。
早く……っ
早く――――!!
ハァハァハァ……
「……っいない……」
肩を上下させながら周りを見たけど、委員長の姿はもうなかった。
「っ……」
楽しそうに笑い合う二人の姿が目に焼き付いて離れない。
胸の奥がズキンズキンと切ない音を立てていた。