私だけの王子さま
なかなか返事が来ないと思い、委員長の方に顔を向けると、大きな手で視線を遮られてしまった。
「…ごめん。今は見ないで。俺きっと真っ赤だから」
いつもの穏やかな声とは違う、明らかに動揺したような声。
依然として、顔の前に出された手。
その指の間から、チラリと見えた委員長は、俯いているのに、耳まで真っ赤なのがよく分かった。
これは、確実に照れている。
そう思ったら、何だか、委員長の新たな一面を見ることができたようで、嬉しくなった。
「…何、笑ってるの?」
軽く微笑んだだけのつもりだったのに、どうやら委員長にバレていたらしい。
「別に、何も笑ってないよ?」
慌ててそう言ったけれど、委員長は納得のいかなそうな表情だった。
お風呂上がりのように赤かった顔は、いつの間にか落ち着きを取り戻し、いつもの委員長になっている。
それを見た私は、安心したけど、少し残念な気もした。
すると、委員長は不機嫌そうな表情のまま言った。
「本当は笑ってたくせに」
私も、すかさず言い返す。
「笑ってないって!」
「いーや、笑ったねっ!」
「………」
委員長って、案外しつこいタイプなのかもしれない。