私だけの王子さま
「うわぁ…」
ホームの中へ入るとすぐに、私は目を見開いた。
なぜなら、そこには、すごく広い空間があったからだ。
クリーム色の床に、白い壁。
いくつかの観葉植物も置かれている。
入り口のすぐ横には、事務所と書かれたスペースがあった。
病院のようだけど、病院ではない。
どこか独特の雰囲気を感じた。
「老人ホームって、こんなに広いんだね?」
私が言うと、委員長は少し笑いながら答えた。
「そりゃあ、車椅子の利用者さんもたくさんいるからね。よく見ると、段差もなくしてあるんだよ。バリアフリーってやつ」
「へぇ…」
なるほど。
段差がないから、余計に広く感じるのかもしれない。
老人ホームに対して、何となく汚いという印象を持っていた私は、実際に目にした光景にひたすら驚いていた。
コンコン…
何の音かと思ったら、委員長が事務所のドア横にある窓口を軽く叩いている。
すると、中にいた職員らしき女性が、私たちの方へ歩いて来た。
だけど、その人の顔は、どこかで見た覚えがある。
一体どこで見たのだろう?
そう考えていたら、私はあることを思い出した。
「あ…」