私だけの王子さま
見覚えがあるわけだ。
なぜなら、その女性は、昨日委員長と一緒に歩いていた人だったのだから。
昨日は、横顔しか見ていないけれど、背丈や髪型などから考えて、間違いないはずだ。
―――ガラッ
その人は、窓口を開けると笑顔で言った。
「雪也くん、おはよう」
すると、委員長も優しい笑顔を返した。
「おはようございます、花梨さん」
やっぱり知り合いらしい。
二人はさらに会話を続ける。
「忙しいのに、本当にありがとね。雪也くんのおかげで、こっちは大助かりなんだから」
「それ、昨日も言ってましたよ?」
「そう?言ったっけ?」
「はい。今までに、何度も聞きました」
私は、黙ったまま、笑い合う二人の姿を見ていた。
‘雪也くん’‘花梨さん’と呼び合う二人は、とても仲が良さそうだった。
でも、委員長は敬語を使っている。
何も聞かされないままここに来たせいで、状況が全くつかめない。
すると、花梨さんと呼ばれた女の人が、私に目を向けた。
「雪也くん、その人が昨日言ってた相原さん?」