私だけの王子さま
本多シズ子さん―――。
この人との出逢いは、私の一生の宝物になったと思う。
真っ白な髪の毛にしわしわの肌。年齢は80歳くらいだろうか。
車椅子の上にいる、小さく細い身体。
でも、どこか…温かくて、全てを包んでくれるような雰囲気を持っている。
「初めまして。相原柚季といいます」
私が軽くおじぎをすると、本多さんは、困ったような顔をみせる。
「相原、ごめん。もう少し、大きな声で言ってあげてくれる?」
委員長のその言葉で、何となく分かった。
きっと、あまり耳が聞こえていないのだ。
私は、本多さんに近付き、もう一度ゆっくりと自分の名前を言った。
すると本多さんは、しわしわの両手で私の左手を掴み、柔らかな笑顔を見せてくれた。
委員長も、花梨さんも、その様子を穏やかな瞳で見ている。
まるで、感動の再会を果たしたかのような光景。
賑やかな人々の声が、周りに響いていた。