私だけの王子さま
「本多さん、すごく綺麗ですね」
委員長が本多さんに話しかける。
あれから私は、三人と合流し、夏祭りの雰囲気を楽しんでいた。
「きれいねぇ…」
委員長の呼び掛けに、本多さんは、予想以上の大きな声で応える。
耳が聞こえにくいために、自分の声の音量が調節しづらいようだった。
二人が見ているのは、綺麗な夏の星空。
お祭りでガヤガヤしている周りと同じように、夜空にも無数の星が、キラキラと光輝いていた。
「そろそろ、戻りましょうか?」
花梨さんが言うと、本多さんはコクリと頷いた。
夏とは言えども、あまり遅くまでいると、風邪を引きかねない。
本多さんの肩には、冷えないように薄い毛布がかけられていた。
ホームの二階にある本多さんの部屋。
薄暗い部屋に電気を付け、車椅子からベッドへ本多さんを移すと、花梨さんは食事の準備のため、一旦部屋を出ていった。
残された私と委員長は、ベッドの横に椅子を出し、そっと腰をかける。
すると、本多さんがゆっくりと口を開いた。
「柚季ちゃんは、雪也くんのお友達なのかしら?」
「はい。そうです」
私が応えると、本多さんは、ベッドの近くに置いてあった写真立てに目をやった。
そこには―――。
私たちと同じ歳くらいの男女が、明るい笑顔で写っていた。