私だけの王子さま



「本多さん、すごく綺麗ですね」


委員長が本多さんに話しかける。



あれから私は、三人と合流し、夏祭りの雰囲気を楽しんでいた。


「きれいねぇ…」


委員長の呼び掛けに、本多さんは、予想以上の大きな声で応える。


耳が聞こえにくいために、自分の声の音量が調節しづらいようだった。



二人が見ているのは、綺麗な夏の星空。


お祭りでガヤガヤしている周りと同じように、夜空にも無数の星が、キラキラと光輝いていた。





「そろそろ、戻りましょうか?」


花梨さんが言うと、本多さんはコクリと頷いた。


夏とは言えども、あまり遅くまでいると、風邪を引きかねない。


本多さんの肩には、冷えないように薄い毛布がかけられていた。








ホームの二階にある本多さんの部屋。


薄暗い部屋に電気を付け、車椅子からベッドへ本多さんを移すと、花梨さんは食事の準備のため、一旦部屋を出ていった。


残された私と委員長は、ベッドの横に椅子を出し、そっと腰をかける。


すると、本多さんがゆっくりと口を開いた。



「柚季ちゃんは、雪也くんのお友達なのかしら?」


「はい。そうです」


私が応えると、本多さんは、ベッドの近くに置いてあった写真立てに目をやった。



そこには―――。



私たちと同じ歳くらいの男女が、明るい笑顔で写っていた。






< 83 / 220 >

この作品をシェア

pagetop