私だけの王子さま



自分よりも先に、可愛がっていた孫を亡くす…。


どれだけ辛かったのだろう?


そう思うと、居たたまれない気持ちになった。




「舞はね、小さな頃からずっと、お姫さまになりたいって言っていたんだよ…」



お姫さま―――…?


私がハッとして顔を上げると、本多さんは、うっすらと悲しそうな笑みを浮かべた。



「昔から、おとぎ話が大好きでね。お姫さまになれば、いつか王子さまがやって来るからって…。口癖のように言っている素直な子だったの」





その時。


私の頭の中に、あの時と同じ過去の記憶が、よみがえって来た。






‘柚季、お人形さんじゃやだ!お姫さまがいいいっ!’


‘どうして?’


‘だって…お姫さまなら、いつかカッコいい王子さまが迎えに来てくれるもん!’



―――あの時、確か、私の側にいたのは、今はもういない父方の祖母だった。


‘お人形さんみたい’って言われたのが嫌で、そう言っていたけれど、



きっと、心のどこかでは、本当のお姫さまになりたいという気持ちがあったのかもしれない。


いつか…

王子さまに会いたいという願いが―――。





そんな私の思考は、本多さんの次の言葉で、一気に現実へと引き戻された。



「…やっと見つけたよって嬉しそうに言っていたのに…」






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