私だけの王子さま
委員長の夢
「相原さーん!それが終わったら、こっちお願い!」
「はーいっ!」
大盛況だった夏祭りも終わり、ボランティアの私は片付けに大忙しだった。
まだ少しだけ残る、食べ物の匂い。
あちこちに散らばる、紙皿や空き缶。
あれだけ準備に時間をかけたのに、本番はあっという間に終わってしまう。
それが少しだけ、寂しく思えた。
‘―――舞の夢を叶えて欲しい’
本多さんからの、真剣な頼み。
その時の私は、返事をすることさえもできなかった。
そのくらい、本多さんが、亡くなった舞さんを想う気持ちが伝わって来たから……。
よく考えてみれば、誰かに何か頼み事をされるなんて、初めての経験かもしれない。
だけど、今のままの私では、まだその願いを実現させることはできないだろう。
変わりたい。
今日このホームに来て、改めてそう思った。
あれからすぐに花梨さんが戻って来て、私も委員長も片付けに向かったから、本多さんが今何をしているのかは分からない。
私は、作業をしながらホームの二階を見上げた。
同時に目に入って来た夜空には、さっきよりもたくさんの星が輝いていた。