私だけの王子さま
――帰り道。
人気のない住宅街を歩いているのは、私たち二人だけだった。
あの日の夜も、こうして私のことを送ってくれたっけ…。
まだそんなに日は経っていないのに、何だか懐かしい気分だった。
「ねぇ、委員長。
委員長はどうして、老人ホームでボランティアをしようと思ったの?」
実は今日、ずっと気になっていた。
朝話した時に、親戚の伯母さんに紹介されたって言っていたけれど。
それだけで、ボランティアをしようという気持ちになるだろうか?
それにその伯母さんが、何の前触れもなく、老人ホームを紹介するとも思えない。
きっと、他に何か理由がある。
そんな気がしていた。
「昔さ、見たことがあるんだ」
しばらく経ってから、委員長が話を始めた。
「見たって言っても、テレビでなんだけど…」
ひとつひとつ、思い返すように―――。
私は、少し高い位置から聞こえてくる委員長の穏やかな声に、ただじっと、耳を傾けていた。