私だけの王子さま
「柚季ぃ〜!元気出せっ!」
こんな時、やっぱり頼りになるのは麻智。
お昼前、夏休みの宿題のことでたまたま電話があった時に、昨日のことを話してみた。
すると、
「重い気分を解消するには出かけるしかない!」
って、私を連れ出してくれたんだ。
そんなわけで、私たちは今、隣町のデパートに来ている。
「あのね、柚季?
誰にでも言いたくないことの1つや2つあるんだよ」
麻智はそう言いつつも、鼻歌まじりに鏡の前で服を合わせている。
あれも欲しい、これも欲しいと次々と持って来るのを見ると、本当は自分の買い物目当てだったことが分かる。
一方、私はと言うと…
「はぁ…」
たくさんある商品には目もくれずに、さっきから飽きるほどため息ばかりをついていた。
土曜日というだけあって、デパートには大勢の客が来店している。
皆、楽しそうにしている中で、私の周りだけは灰色の空気が漂っていた。