緑の風がそよぐとき

「こら、何勝手にあがってんのよっ」

倫太郎はそんなことおかまいなしにリビングに入っていく。
まあ、昔からこうなんだけど。
でも最近はお互いに働いてて顔を合わせることも少なくなったから、倫太郎が我が家にくるのも久しぶりだ。

「あっ、彬兄のパスタがある!」

倫太郎は早速テーブルの上にあった標的を見つける。

「それ、狙ってたんでしょ」

「バレたか」

「バレバレよ」

彬兄はお母さんが出かけてるときにはよくパスタを作ってくれる。
それがおいしいことを倫太郎もよく知ってる。

「だってさ、もうすぐ彬兄のパスタも食べられなくなるしさ」

わたしは倫太郎のその言葉にすぐには返事ができなかった。

わかっていることだけど、認めたくなくて。

妙な沈黙が流れる。


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