緑の風がそよぐとき

そのとき電子レンジが出来上がりの音を鳴らす。

熱くなったお皿を持って倫太郎へ差し出す。

そのパスタをじっと見て、

「やっぱ、俺いいや。真琴が食べなよ。せっかく彬兄がお前のために作ったんだしさ」

そう言って席を立った。

倫太郎はテーブルの上に置きっぱなしにしてあった彬兄からのメモをちらっと見た。

「じゃ」

そう言うとさっさと玄関へと向かう倫太郎。

「倫太郎?」

わたしの呼びかけを無視して倫太郎は帰ってしまった。

「は?訳わかんない」

でも、倫太郎を追いかけて理由を聞こうという気持ちにはなれなかった。

それよりも彬兄がいなくなることが心を重くしていたから。



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