緑の風がそよぐとき
その答えを聞いて、青年は一瞬考えるような素振りを見せたが、すぐに笑顔になった。
「きみの願いをひとつ、叶えてあげるよ」
何のこと?
言われた意味がよくわからない。
わたしの中で疑問符が増えていく。
「願いなんて何もないけど、あなたは誰なの」
その問いに青年は笑顔でしか返答しなかった。
そのとき、強い風が舞い、木々の葉を鳴らした。
一斉に雨粒が落ちてきて、わたしは思わず目を瞑る。
雨粒が傘から滑り落ち、目を開けたとき、目の前にいた青年はいなくなっていた。
そこには、木々のざわめきだけが残っていた。