緑の風がそよぐとき
神社を後にしたわたしは、日曜日ってこともあっていつもより遠くまで歩いてみた。
川沿いや、いつもは買い物しない商店街を抜け、家に帰り着いたのはもうお昼前になっていた。
「ただいま」
リビングに入ると彬兄の姿があった。
「おかえり。今日は随分と長く歩いてきたんだね」
わたしは冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
「うん。いつもは歩かない商店街まで行ってきたの」
ミネラルウォーターを口に含みながら彬兄を見るとパスタを食べてる。
「もう少し待ってくれれば一緒に食べられたのにな」
わたしは不服そうに唇を尖らせた。
「ごめん、ごめん。昼から式の打ち合わせがあるんだ」
彬兄はそう言って、時計をちらりと見た。
わたしの胸がチクッと痛む。
「そう…なんだ。佳奈子さんによろしく。わたし、汗かいたしシャワーしてくるね」
わたしは慌ててお風呂場へ向かった。