教え子の甘い誘惑
カバンはある。だから学校には来ているんだろう。

朝、廊下で見かけた気もするし。

アタシは深くため息をつきながら、保健室へ向かった。

保健教諭はアタシと同じ歳で、同じ大学を出た榊原(さかきばら)涼子(りょうこ)がいる。

美人でビシッとしていて、生徒達や教師達からの信望も厚い。

しっかりしているから、いろんな人から悩みを相談されるそうだ。

彼女は実際、カウンセラーの資格を持っているから、いつも保健室は誰かしらいる。

「榊原先生、今良いですか?」

だからアタシは保健室に入る時は、教師の顔をする。

「アラ、美咲(みさき)。また世納クンに逃げられたの?」

ぐっさり★と言葉の矢が、胸に突き刺さった。

この言葉のキツさ…本当にカウンセラーの言葉だろうか?
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