教え子の甘い誘惑
ここ三ヶ月のアタシの苦労を良く知っているから、こういう顔ができるんだろうな。

…いい性格をしているよ。彼とはまた違って。

「彼だけの問題じゃないわよ。アタシや担任の先生にだって、処分は回ってくるんだから」

「指導力不足と言われても、困ることよね。教頭先生からはあたしにも声がかかっているのよ。どうにか彼を説得できないか、ってね」

「でも居場所が特定できないからねぇ。まさか授業中に探しに行くわけにもいかないし」

「校舎の中にいるのは分かっていることなんだけどね」

「ええ。アタシの次の授業には必ず出席するもの」

つまり彼はアタシの受け持つ英語だけが、問題になっている。

このままじゃ本当に進級も危うい。

「アンタも厄年なんじゃない? そろそろ担任になりたいなんて言っていた時に、問題児と当たるなんてね」

「ホント。この5年間、何とか平穏無事に過ごせてきたんだけどね」
< 6 / 40 >

この作品をシェア

pagetop