教え子の甘い誘惑
「―聞いていた通りよ、世納クン。今日の放課後は空けといてね」

シャッとカーテンが開き、問題の彼が顔を出した。

楽しそうに笑いながら。

「分かった。一度ゆっくりと話がしたかったから、ちょうど良いや。ありがとね、榊原先生」

「…あんまりあのコをイジメないであげてね。今時の教師としては珍しく、教育に情熱を燃やすタイプなんだから」

「でも最近じゃ、燃え尽きてきているよね。つまんないの」

「誰がそうしたのよ」

涼子は立ち上がり、アタシから受け取ったコーヒーカップの底で、彼の額を小突いた。

「アイタッ! …でも意外と持ったよね。オレ、1ヶ月も持たないと思っていたんだけど」

「だから頑張り屋なのよ。あたしとしては、何とか来年には担任にさせてあげたいの。あなただって、留年なんてしたくないでしょう?」

「まっ、それはそうだね。親がうるさそうだし」

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