通りすがりの恋模様<極短>

あたしを見て首を傾げる彼にあたしは勝手にひどく、ひどく傷ついた。

彼はなんにも悪くないのに。
勝手にあたしが片思いしただけなのに。

彼の視線の先に気付いた彼女。

「けんちゃん知り合いー?」


それをきいた瞬間。あたしは駆け出した。

全力で。

繋いでた手など振りほどいて。
親しげに繋がれた手も

笑顔も

全部、全部消し去るほどに。

ただ走った。


涙なんか出なかった。

ただ胸が痛かった。


変な子だと思われたに違いない。


どうでもよかった。

思ってたよりずっとずっと…

名前も知らない彼に恋してた自分にビックリした。

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