Monsoon Town
同じ頃、陣内は『エンペラーホテル』の最上階レストランにいた。

「きてくださって光栄です」

向かいの席に座っている綾香が言った。

「ああ…」

陣内は複雑な気持ちだった。

ほんの社交辞令だと割り切ってしまえば、簡単なことなのである。

クラシック音楽が流れる最上階レストランで、陣内は思った。

窓ガラスに視線を向けると、宝石を散りばめたような美しい夜景があった。

そして、テーブルのうえに豪華な料理が並べられていた。

「陣内さん、何か嫌いな食べ物があるんですか?」

「…えっ?」

いきなり綾香にそんなことを聞かれたので、陣内は戸惑った。
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