Monsoon Town
冷たかった。

甘い香りが鼻から抜けるのと同時に、ワインの冷たい温度を感じた。

「…冷たいな」

グラスから口を離した陣内が呟いた。

「ここのワインは、よく冷えてるんです」

綾香が笑いながら言った。

陣内はワインを口に含んだ。

口の中に感じる冷たい液体を舌のうえで味わった。

その冷たさを堪能した後、ワインを喉に流した。

「どうですか?」

そう聞いてきた綾香に、
「冷たいのも、なかなか悪くないな」

陣内は答えた。

「フフッ、そうですか」

綾香は嬉しそうに笑った。

笑った後でジッと陣内の顔を見つめると、
「あたし、陣内さんが好きです」
と、綾香は言った。
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