Monsoon Town
そう言った綾香に、初めてその言葉を聞いたと言うように陣内の表情が固まった。

(――今、何て言った…?)

固まった表情のまま、陣内は綾香を見つめた。

「あたし、陣内さんが好きなんです」

綾香が唇を動かして、先ほどと同じ言葉を告げた。

自分の聞き間違いではなかった…。

彼女は、自分に“好き”と言ったのだ。

陣内の心は、複雑な思いが渦を作っていた。

綾香はそんな陣内を見つめながら、彼からの返事を待っていた。

陣内は固まっているだけで、何も言わない。

後頭部に鈍い痛みが走った。

アノヒトハ、オレヲステテドコカヘイッタ

――待って!
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