Monsoon Town
「えっ…ああ、大丈夫だ」

陣内は呟くように返事をした。

早く脈を打っている心臓は、激しい運動をした後のようだった。

息をするのが、やっとのところだ。

綾香がハンカチを差し出してきて、
「汗、すごいかいてます」
と、言った。

言われて額に手をやると、ベッタリと汗がついた。

陣内は綾香の手からハンカチを受け取ると、額の汗をぬぐった。

「突然こんなことを言ってごめんなさい。

陣内さんも困ったでしょう」

声のトーンが低いのは、本当に申し訳ないと思っているのだろう。

「けど、あたしが陣内さんを好きなことは本当です。

いきなりこんなことを言って、本当に申し訳ありませんでした」

綾香にそんなことを言って欲しい訳ではなかった。
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