Monsoon Town
ふと視線を向けると、誰かがいることに気づいた。

漆黒の髪に、見あげるほどの長身だ。

高そうなスーツを着こなしている姿は、つい見とれてしまう。

「あら、社長じゃないですか…」

そこでプツリと、那智の意識が遠のいた。


次に目を開けた時、那智は背中のうえだった。

顔をあげると、
「気がついたか?」

そこには、陣内の顔があった。

「――えっ…私、ええっ!?」

那智は状況を理解するために、キョロキョロと首を動かした。

自分がいるのは、陣内の背中のうえである。

(もしかしなくても、私は彼におんぶされているの…?)

その状況に、那智は戸惑った。
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