Monsoon Town
「その顔は、何にもわかっていないんだな」

そんな那智に向かって、陣内が言った。

「――だって、私…」

言いかけた那智をさえぎるように、
「倒れたんだよ」

陣内が言った。

「た、倒れた?」

那智は驚いて聞き返した。

それは一体、どう言うことなのだろうか?

「俺の顔を見たとたん、お前は倒れたんだよ」

「あっ…」

那智は気づいた。

そう言えば、陣内の顔を見た瞬間に意識が終わってしまっている。

「アルコール中毒を起こしたのかと思ったよ。

ずいぶんと飲み過ぎていたようだからな」

そう言った陣内の声のトーンが低いのは、自分の気のせいだろうか?
< 149 / 433 >

この作品をシェア

pagetop