Monsoon Town
顔を覗き込まれて言われたので、那智は慌てた。

「――別に、そんなことを言ってないじゃない!」

クスクスと笑っている陣内に、那智は一瞬でも彼をかわいいと思ってしまった自分を恨んだ。

(やっぱり、最悪!)

心の中でそう叫んだ。

「那智」

陣内が名前を呼んだ。

呼ばれた那智は、恥ずかしさで顔が紅くなって行くのがわかった。

顔が紅いのは飲み過ぎたせいだからだと、那智は自分に言い聞かせた。

こうして名前を呼ばれるのは、何年振りだろうか?
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