Monsoon Town
「これでいいんだろ?」

そう聞いてきた陣内に、那智は紅くなった顔を隠すように背中に顔を埋めた。

「家、どこだ?」

「次の信号を右に曲がって、坂をのぼったところです。

そこに私が住んでるマンションがああります。

部屋は、507号室です」

那智が家の場所を教えたら、
「うん」

陣内が返事をした。

それからは、会話はなしだった。

那智は陣内の背中の温かさを頬で感じていた。

こうして誰かのぬくもりを感じたのは、久しぶりだった。

「――陣内さん」

彼を呼んでしまったのは、ぬくもりに押されたからだと思う。

「何だ、具合が悪いのか?」

陣内が聞いてきた。
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