Monsoon Town
それに対して、那智は首を横に振った。

「――結婚、するんです…」

呟くようにそう言った那智に、
「えっ?」

陣内は聞き返した。

「後輩の女の子が」

「主語を言え、お前が結婚するのかと思ったぞ」

何をしゃべっているんだろうと、那智は思った。

後輩の結婚を彼に話したって仕方がないだけである。

「それで、後輩が結婚するからなんだ?」

「…聞いてくれるんだ」

「話し始めたのはお前の方からだろう」

とりあえず、聞いてくれるようである。

「また、結婚する人が増えちゃうなって思ったんです。

職場は熱愛と結婚ラッシュなのに、私には全然それがないなって」

那智は自虐的に言うと、フフッと笑った。
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