Monsoon Town
部屋の前に到着すると、
「おい、鍵」

陣内は那智に声をかけた。

「えっ?」

「鍵、部屋の鍵だ」

半分寝ている顔で、那智が合鍵を差し出した。

陣内は彼女の手から鍵を受け取ると、ドアを開けた。

靴を脱いで部屋の中に足を踏み入れると、手探りで電気のスイッチを探した。

「あった」

パチッと音がしたのと同時に、部屋が明るくなった。

小さな部屋だった。

ワンルームと言うのだろうか?

「ほら、ついたぞ」

「――んーっ…」

陣内は那智をベッドのうえに寝かせた。

那智はスースーと静かに寝息を立てて眠っていた。

「――はあ…」

陣内は息を吐くと、床のうえに腰を下ろした。
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