Monsoon Town
疲れがどっと出てきた。

那智に視線を向けると、陣内の苦労なんて知らないと言うように眠っている。

「ったく、アホか…」

陣内は那智の顔に手を伸ばすと、つけていた眼鏡を外した。

はっきりとした目鼻立ち。

桜色の唇。

よく整った顔立ちに、陣内はジッと見つめた。

「どこがモテないんだか、ちゃんとした美人のくせに」

那智の顔を見つめた後、陣内は呟いた。

全くと言っていいほどに、彼女には自覚がないのだろうか?

そう思いながら、陣内は足元に視線を向けた。

「何だ?」

足元に落ちていたそれを、陣内は拾いあげた。
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