Monsoon Town
文庫本だった。

表紙には、少女マンガのようなかわいらしいイラストが載っている。

「こいつ、こんなのが好きなのか?」

陣内は呟くと、文庫本の表紙をめくった。

那智が眠っている横で、陣内は文庫本を読み始めた。


夢を見た。

隣にいるのは、理想の彼氏である。

少女マンガの世界から飛び出してきたような、素敵な男の人だ。

かっこよくて優しい自分だけの王子様に、那智は幸せな気持ちでいっぱいだった。

その時だった。

「何してる?」

その声に振り返ると、陣内が立っていた。

どうして彼がここにいるのだろう?
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