Monsoon Town
那智は全くと言っていいほどに状況がよくわからなかった。

一体何で?

何の用で?

考えれば考えるほど、わからなくなる。

陣内が那智の前に歩み寄ってきた。

突然近づいてきた陣内に、那智は戸惑った。

「――あの…」

言わせるひまを与えないと言うように、陣内が那智の手を引っ張った。

「――ちょっ…」

あっという間に、那智は陣内の腕の中に入ってしまった。

肩に手が回されたこの状況を、どう理解しろと言うのだろう?

どう理解して行動しろと言うのだろうか?

そう思っていたら、陣内がこう言った。

「――那智は俺のものだ」
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