Monsoon Town
いきなり声を荒げた那智に、陣内は戸惑うことしかできなかった。

「私はあなたが思っているような人ではありません」

怒鳴った後で那智は目を伏せると、
「――私、こう見えても1度は男の人とつきあったことあるんです」
と、言った。

「高校1年生の終わりくらいでした。

クラスメイトのかっこいい男の子に告白されて、彼とつきあい始めたんです。

けど…キスも躰の関係もないままで長続きしなくて、自然消滅みたいな感じで別れちゃったんです。

男の子に告白されたことが嬉しくて、ただ何となくつきあっただけなんだなって思いました。

でもその後、わかったんです」

「何をだ?」

陣内が話の続きを促すように聞いてきた。

そのことを思い出すと、那智は悔しくなった。

けど、唇は勝手に動いて話の続きを言おうとする。

この男に話したって、解決できる訳がない。
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