Monsoon Town
「――賭けの対象にされていたんです、私…」

「賭け?」

どっかで聞いたような言葉だと思いながら、陣内は聞き返した。

「私とつきあって、どこまで行けるかみたいな賭けの対象にされていたんです。

彼と別れて1週間くらいに偶然聞いて…ああ、私はただ単に遊ばれていたんだなって思いました。

賭けの扱いをされていたんだなって」

話し終えた後で、那智は唇を噛んだ。

当時の記憶が、頭の中でよみがえりそうになった。

地味でモテなかった自分は、相手に好都合な賭けの対象にされた。

男は簡単に思わせぶりな態度をとることを那智は学んだ。
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