Monsoon Town
突然のように集中された視線に、那智は後退りをした。

「もしかして、桃井先輩ですか?」

誰かが言った。

「そうだけど…?」

呟くようにそう答えた那智に、
「えーっ!?」

驚きの声が社内中に響き渡った。

「知らなかったー!

桃井先輩があんなに美人だったなんて!」

「俺、今の今までお局様のおばさん予備軍かと思ってた!」

(おばさん予備軍って…)

勝手に聞こえてくる男同士の会話に、那智は人差し指でこめかみを押さえた。

「桃井先輩、ですよね?」

そう言って声をかけてきたのは、前のデスクに座っている男だった。
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