Monsoon Town
「ええ、何かしら?」

那智が返事をしたら、
「今日のお昼、一緒にどうですか?」

男の唇から誘いの言葉がこぼれ落ちた。

ここで喜ぶのが当たり前だろうと思うが、那智はカチンと頭にきていた。

(今の今まで目の前にいたのに、1回も話したことないじゃないの!)

初めて話しかけられたのが、自分がイメージチェンジをした後である。

自分がお局様を演じていた時は、彼は目もあわせようとしてくれなかった。

あきらかな態度の違いに、
「ごめんなさい。

先に約束してる人がいるから、また今度で」

那智はたった今思いついたウソを言った。

「あ、そうですか…。

失礼しました」

男は頭を下げると、早足で自分のデスクへと戻った。
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